・不動産と動産
不動産とは、大陸法系の民事法・国際私法などで用いられる概念です。一言で言えば、土地や、それに付随する定着物のことを指します。
この考え方では、モノを不動産と動産に分けて考えています。では、なぜ不動産とそれ以外で分類されているかと言うと、1つには歴史的な理由が考えられます。資本経済が発達する前から、不動産は重要な資産と位置付けられていました。日本でも、地域の経済力を石高(こくだか)という、その土地からとれるお米の収穫量で表していましたよね。人が持つ資産の中でも不動産は別格と古くから認識された結果、このような分類がされたと考えられます。
民法86条の1項
土地及びその定着物は、不動産とする
以上が民法の第86条の1項であり、この文章の中で難しいのは「定着物」という表現ですが、定着物とは主に建物を指します。
民法とは、私たちに最も馴染み深い法律であり、私たちの権利に関すること、お金の貸し借りに関すること、不動産に関すること、契約に関すること、売買に関すること、雇用に関すること、結婚や離婚に関すること、親子関係や相続に関することなどが定められた法律です。
たとえば、日本では男性は18歳から、女性は16歳から結婚することが可能であり、20歳を以て成年と見なしますが、これらも民法で定められています。( ※ この規定は、令和4年4月1日から変更になるため注意してください )
ちなみに、民法の第八十六条の2項には、動産(どうさん)という言葉の意味が記され、不動産以外のもののすべてを指します。
なお、庭木、庭石など取り除くことができないものは、土地の附合物としてみなし、土地と一体となってひとつの不動産を形成すると考えられる。不動産は動産にくらべ、価値(金額等)も大きく、権利関係もさまざまなケースがあるため、取引時の取り扱いについては、民法、宅建業法等に則り、慎重かつ厳正に行わなければならない。
※土地と建物の関係性は日本と欧米で大きくことなっており、土地と、その上に建つ建築物の関係性・結び付きをどう解釈するかは、国によって違いがあります。日本の場合、土地と建物はそれぞれ個別の不動産と認識されています。登記事項証明書が土地と建物で1冊ずつ用意されているのも、こうした認識のためです。一方で、欧米では、建物はその土地に属すると考えられます。そのため、土地の所有者=建物の所有者という認識になります。日本のような法制度は珍しいので、注意が必要です。
不動産の定義
民法において「土地とその定着物」と定義されています。土地とその 土地に建っている建物や草木、田畑などが該当するようです。多数の方が認識する不動産と言えば、以下のようなものだと思います。
- 一戸建て
- マンション
- アパート
- ビル
- 土地
- 農地
- 山林
- 店舗
- 工場
- 倉庫
じっさいのところ建物とは何かというと、なかなか難しいものがあります。不動産登記法111条では、
「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」
と定義しています。
この規定は、不動産登記の場面における建物の定義でであり、一般的な建物の定義として規定されているものではありませ。
建物といっても何をもって建物というかは、取引によってとらえかたがかわります。よって物理的な構造のみをもって建物とは何かを判断するべきではありません。
取引の対象となる建物が住宅であれば、単に屋根や壁があればいいというものではなく天井や床も当然必要となります。それが倉庫であれば屋根さえあれば天井などは必要ないということになるかもしれません。
建物といえるかどうかは,上記不動産登記法111条の定義を参考としつつも、その対象となっている物が取引や利用目的からみて社会通念上で建物といえるかどうかを個別に判断するということになります。
ただ、屋根や壁で遮断された空間の中でも、自動車などは動産に含みます。また、ふすま・畳など不動産の一部は動産と見なされます。その他、立木や特定の不動産関連財団も不動産と見なされます。