遺言書の種類
1.  自筆証書遺言書

日付や本文など、最初から最後まですべて自分で手書きするのが「自筆証書遺言書」です。家庭裁判所による検認は必要ですが、3種類のなかでは、もっとも簡単に書きはじめられる遺言書と言ってよいでしょう。

手書きであることが必須なので、パソコンやスマホなどを使っての文書は無効です。また音声や動画でのこしたものも、おなじく無効となるので注意しましょう。財産目録に限っては、自筆以外の作成が認められていますが、署名押印する必要があります。

作成方法

自筆証書遺言は、以下のように作成します。

  • 遺言者が遺言の全文、氏名、日付をすべて手書きで作成・捺印。
  • ただし、財産目録はパソコン等で作成したものでも可。

注意点

有効な自筆証書遺言書をのこすために、主にチェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 自筆であること(パソコン使用や音声・動画も不可)
    ただし財産目録に限り、自筆でなくてもよい(パソコン、代筆での作成可能)
  • 日付は正しい形式で書くこと
  • 遺言者が満15歳以上であること
  • 書面と封入時に押印すること(実印・認印どちらも可)
  • 紛失やねつ造に注意して保管すること
  • 保管場所を家族に共有すること

メリット: 家庭裁判所の検認以外の特別な手続きを必要としない本文の形式は自由好きなタイミングで修正できる
デメリット:  手書きのため、書き損じが起こる可能性が高い無効な遺言書とならないよう注意が必要である開封時に注意が必要である(検認のない遺言書を許可なく開くと過料に処せられる)遺言者による自筆が不可能な場合でも、代行者による代筆はできない

2.  公正証書遺言書

自筆証書遺言とは違い、公証人とともに共同で作成する「公正証書遺言書」は、もっとも確実性のある遺言書です。手間や費用はかかってしまいますが、専門家に代筆してもらえるため、信用性が高いのが特徴です。

専門家に依頼する手間や費用の代わりに、確実に有効性のある遺言書が作成できるのがメリットになります。自筆証書遺言書だとすこし不安な方は、こちらの公正証書がおすすめです。

作成方法

公正証書遺言書は、以下のように作成します。

  • 2名以上の証人の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を口述する。
  • 公証人は遺言の内容を筆記し、遺言者、証人、公証人が署名・捺印。

注意点

主にチェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 本人確認書類、印鑑証明書、実印を用意すること
  • 手数料を現金で用意すること
  • 不動産などが本人名義のものであるか確認できる証明を用意すること
  • 遺言書完成までに2週間から1ヶ月程度の時間がかかること

メリット:  専門家による確実な遺言書が作成できる家庭裁判所の検認が不要である捏造、盗難の心配がない相続される財産が明確になる
デメリット:   費用や手間がかかる第三者にも遺言書の存在や保管場所を知られてしまう

3.  秘密証書遺言書

「自分ひとりで遺言書を書くのは不安だけど、内容はだれにも知られたくない……」といった場合におすすめなのは、「秘密証書遺言書」です。専門家によって内容をチェックしてもらうことはできませんが、用意した遺言書が確実に被相続人によるものだと証明してもらえます。

家庭裁判所の検認が必要であり、手数料もかかってしまうためデメリットも多い形式ですが、どうしても遺言内容を伏せておきたい場合には検討の余地があります。

作成方法

秘密証書遺言書は、以下のように作成します。

  • 遺言者が遺言を作成し、その遺言書に署名・押印をしたのち封印をする。
  • 遺言者が、公証人と証人2人以上の前に封筒を提出し、自己の遺言であること、氏名住所を申述する。
  • 公証人が、その遺言に提出した日付、遺言の申述(自己の遺言であること及び氏名住所)を封筒に記載し、公証人、証人、遺言作成者本人が封筒に署名押印する。

注意点

主にチェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 遺言書自体は自筆すること
  • 公証役場で「被相続人による遺言書である」と証明してもらうこと

メリット:  第三者に遺言内容を知られずにすむ
デメリット:   手数料が発生する家庭裁判所の検認が必要である遺言書そのもののチェックはしてもらえない(無効となる可能性がある)