相続準備ー今からできる、家族のためにしておきたいことー

「相続準備」と聞くと、先のことのように思えたり、まず何から始めればいいのかわからなかったりする方が多いのではないでしょうか? 

しかし家族の負担を減らし、税法を守って正しく節税するためにも、準備は早めに始めておきたいもの。
相続の手続きは人生で何度も経験するものではない上に、申告までに期間が定められており期限内に手続きを終えるのはとても大変な作業になります。

お葬式や法要、家財整理などのこされた家族が行わなければならない作業は相続関連のほかにもたくさんあります。資産の整理だけでも済ませておき、とどこおりなく相続手続きへ移れるように整えておくことで、家族の負担を大きく減らせるもの。相続準備は、「のこされた家族のための準備」と言えるでしょう。

Contents

相続準備のためにできること

家族のこと

不動産のこと

お金のこと

その他の資産

家族の為にできること

家族の状況をしっかり把握しておく。

相続準備の第一歩は、家族の状況をしっかり把握すること。つまり、相続人にあたるのはだれなのかをはっきりさせることが大切です。

相続人になれる人の範囲や、目安となる財産の配分は、家族構成に大きく左右されます。
相続人には順位が決められており、それによって相続を受ける配分が細かく決まっており、家系図などで家族の関係を正しく把握しておくと、実際に相続される金額や納めるべき税金などの目安が分かります。

また、それによって相続人がどのように相続手続きをするのか、どのような相続の仕方が良いのか考える時間が出来るので手続きがスムーズになります。

相続人の順位は

  • 第1順位:被相続人の子供
  • 第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
  • 第3順位:被相続人の兄弟姉妹

※例えば、亡くなった男性に妻と子供(長女)がいた場合、妻と長女の2人が法定相続人になります。この場合、順位の低い親や兄弟姉妹は相続できません。ただし、前夫や前妻との子供は、再婚をしてから生まれた実子と同じように第1位順位の法定相続人として扱うことが可能です。亡くなった方に養子がいた場合も同様です。
※、胎児については、すでに生まれたものとみなすため、法定相続人になることが可能です。ただし、生まれて初めて権利が確定するため、死産の場合は生まれるはずだった子供に相続権は与えられません。
※被相続人の子供または兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合は、その子供が代わって相続可能です。この制度を「代襲相続」といいます。例えば、先述の例で、第1順位の子供(長女)が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、その長女に子供(被相続人から見て孫)がいれば、孫が法定相続人とみなされます。

相続人 配偶者 こども①(第1順位) こども②(第1順位) 親(第2順位) 兄弟姉妹(第3順位)
配偶者・こども
1/2
1/4
1/4
配偶者・親
2/3
1/3
配偶者のみ
1
こどものみ
1/2
1/2
親のみ
1
兄弟姉妹のみ
1
法定相続人の配分割合

戸籍謄本を用意しておく。

相続を行う際には、様々な、時には煩わしいとも思える作業が発生します。その中のひとつが「戸籍謄本」。資産を相続するには、被相続人の戸籍謄本が必要です
戸籍謄本は、被相続人の本籍地にある市区町村役所(場)で本人が申請すれば、簡単に取得できますが、本人以外の代理人が取得するには委任状が必要となるため、あらかじめ本人が取得しておく事で遺された家族の負担を減らします。

相続に必要な戸籍謄本は少ない人で3~4通、多い人では10通以上になることもあるからです。
結婚や本籍を移すときなどには新しい戸籍が作られます。また過去に何度か戸籍法の改正があり、改正前の改製原戸籍謄本というものも存在します。

戸籍謄本についてはコチラ

生前贈与を検討する。

相続税は、基本的には財産総額が「基礎控除額」をこえた場合に発生します。そのため、財産総額がすでに基礎控除額をこえている、もしくはこえそうな場合は、相続税の節税のために「生前贈与」を検討するのも一つの手です。

生前贈与は、親族などに財産を贈ったり施設や自治体に寄附をしたりすることで、課税対象になる財産を減らす方法です。贈与をおこなうと贈与税が発生しますが、制度や特例を利用して節税できる方法がいくつかあります。

相続とは・・・ 
相続とは「ある人が亡くなったときに、その人の財産を引き継ぐこと」を指します。
相続の対象=「相続人」となるのはふつう、亡くなった人の配偶者や子ども、両親、兄弟などの親族です。相続は、亡くなった人が財産の譲渡について意思表  示をしていなくても、法律にもとづいて自動的におこなわれます。もし意思表示をしたいときは、遺言書が必要です。遺言書には種類やさまざまな書き方の注意点があるので、事前に確認して正しく作成しましょう。

贈与とは・・・
贈与とは「財産を他者に無償で贈ること」を指します。贈与は相続とは異なり、自動でおこなわれることはありません。財産を贈る人、受けとる人の同意があって、はじめて贈与が成立します。だれにでも財産の譲渡がおこなえるのも、贈与の特徴です。

生前贈与とは「生きている間に財産を贈与する」ことです。
生前贈与は、贈与を受けた「受贈者」の住宅の購入費や教育費を支援したり、相続でかかる税額をおさえるためにおこなわれます。

生前贈与のメリット・デメリット
生前贈与のメリット

1.受贈者が必要としているときに財産を送ることが出来る。
相続であれば、財産が贈れるのは自分の死後に限られます。しかし生前贈与であれば、相手が財産を必要としているタイミングにあわせて必要な分だけ財産を贈ることができます。

2.節税できる可能性がある。
一定の金額をこえて相続をおこなうと、相続人に税金を支払う義務が生まれます。一方で生前贈与の場合には、こうした財産の動きにともなう課税の対象にならない特例がいくつかあり、節税できる可能性が高いのが大きなメリットでしょう。

生前贈与のデメリット

相続よりも税金を多く支払うケースがある

節税効果が見こめる生前贈与ですが、贈与する金額や財産の使用目的によっては、相続よりも多くの税金を支払うことになる場合があります。税法を守ってかしこく節税しましょう。

遺言書の書き方を調べてみる。

遺言書の書き方や保管の仕方について調べておくのも立派な相続準備です。決まりに沿って正しく遺言書を作成しておけば、法の力が不要なトラブルから守ってくれます。

遺言書とひと口にいっても、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」といくつかの種類があります。資産の種類や家族の状況によっても最適な遺言書は変わるもの。困ったときは専門家にも頼りながら、自分にあった遺言書を用意しましょう。

どの方式で書くべきか迷う、または自分ひとりの判断で書き進めるのに不安がある方は、専門家に相談することをおすすめします。

相続準備できをつけること

1.  資産を相続しやすい状態に整理しておこう

前提として、資産を「相続しやすい状態」に整理しておくことが大切です。たとえば銀行口座をどれくらいもっているか書き出して使っていないものを解約したり、登記簿謄本を取り寄せて保有している土地の権利関係を明確にしたり。資産の内容や種類を把握して、財産目録を作成しておくのも有効です。

財産の分け方などをあらかじめ考えて遺言書を用意しておけば、さらに家族の負担を軽減することができます。

2.  税法を守って賢く節税しよう

相続や贈与など資産の動きにともなって発生する税金は、支払い、手続きともに相続人がおこなうもの。相続人はできる限り節税対策をしたいと考えるでしょう。しかし「相続税の節税対策=財産を減らすこと」だからこそ、相続人の方から節税対策を言い出すのは難しいはず。財産をのこす人が節税についてもしっかり考えて対策できるとよいですね。

3.  家族に情報を共有しておこう

「せっかく遺言書を書いておいたのに、家族へ知らせるのを忘れていた」「資産の保管場所を家族に伝えていなかったために、きちんと相続がなされなかった」というケースは、決して珍しくはありません。家族の負担をすこしでも減らすために、またせっかくの相続準備が無駄にならないように、相続準備を始めていることだけでも共有しておけるとよいでしょう。

相続対象になる資産

資産には「相続できる資産」と「相続できない資産」があります。それぞれの代表例は以下のとおりです。

<相続できる資産>

・現金や預貯金、小切手などの金融資産
・土地や住宅などの不動産
・土地の賃借権をはじめとする不動産にまつわる権利
・そのほか自動車や貴金属など

<相続できない資産>

・受取人指定済の死亡退職金や生命保険金
・損害賠償金や遺族年金、香典
・墓地やお墓、仏具など
・資格や生活保護受給権など被相続人に寄与するもの

資産と聞くとプラスなイメージがありますが、「借金」や「未払いの税金」などの負債も「相続できる資産」に分類されます。

相続人はどの範囲の資産を相続するかを選択します。選択肢は、内容を選ばずに資産をすべて相続する「単純承認」、負債以外の資産を選んで相続する「限定承認」、資産すべての相続を放棄する「相続放棄」の3種類。

基本的には、被相続人が亡くなったと知った日の翌日から3か月以内に、相続するか相続を放棄するかを決断しなくてはなりません。

相続人がおこなう手続きについてはこちら

前もって資産を整理すること、家族の状況を把握すること、遺言書を書くこと。「相続準備」と聞くと大げさな作業が待ち受けているように思えますが、地道な準備の積み重ねです。

「だれ」に「何を」相続するのかを考え、資産や家族構成に応じて、時間のあるうちにいろいろシュミレーションしてみましょう。
また、問題が起きた時、判断に迷ったときには専門家に相談してみることが一番です。